タブロイド
タブロイド版ペーパー・メディアのデザイン・レイアウト
その1

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タブロイド版のレイアウトをブランケット版のレイアウトと同じにする必要はない
●「文字組み」がベースになっているペーパー・メディアのうちで、ブランケット版一般新聞の次に普及しているのは、タブロイド版新聞です。紙規格の「A3判」に相当するタブロイド版は、ブランケット版と比較したときの呼び方で、西欧では、大衆紙と呼ばれたり、エンターテインメント系やスポーツ新聞系の新聞、もしくは「イエロージャーナリズム」のことを総称する場合が多いようです。そういうケースが、確かに多くはありますが、本格的ジャーナリズムを追究するタブロイド版新聞も少なくありません。

●週刊や旬刊あるいは月2回刊などで、タブロイド版新聞が発行されるケースは、日本国内でも数知れないほどあります。政党、労働組合など組織の機関紙、地域情報紙、地方新聞、タウン紙、自治体広報紙、PTA新聞、学校新聞、業界紙……など、ジャンルやテーマ、読者層もさまざまです。

●これらのメディアは、編集方針、制作方針によって、紙面のデザインに創意工夫をそれぞれ凝らしていますが、レイアウトのセオリーは、ブランケット版一般新聞を手本としてきました。かつて、新聞レイアウトのセオリーや経験則がもっとも強固であり、手本とする紙メディアがほかに存在しなかったために、ブランケット版一般新聞は、あらゆる面で文字組み版へ影響を及ぼしてきたのです。

●一つには、雑誌の隆盛とともに、タブロイド版新聞は、ブランケット版新聞の影響から抜け出る、という現象を生じました。タブロイド版新聞には、レイアウト・デザインの側面から見て、雑誌流のデザイン・レイアウトとブランケット版一般新聞のデザイン・レイアウトの流れが混ざり合うようになりました。

●そもそも、「新聞割り付け」と呼ばれるブランケット版レイアウトの方法論や技術は、
@活字の時代に構築された
Aモノクロが主流の時代に編み出された
B日刊発行メディアの技術を基本にしている
……などの性格をもっています。

●活版、モノクロ、日刊。この3点の条件に縛られながら、長い年月をかけて築きあげられたのが、「新聞割り付け」なのです。この場合の「新聞」とは、ブランケット版であり、一般新聞です。朝毎読(ちょうまいよみ)の三大全国紙、日経、産経を含めた5大全国紙、さらには各地の地方新聞のほとんどは、ブランケット版でつくられてきました。

●このような背景から、タブロイド版の新聞は、レイアウトという側面ひとつとっても、ブランケット版のセオリーや技術を模倣し、摂取してきました。いはば、「大は小を兼ねる」という意味もあって、タブロイド版独自のレイアウト・セオリーや技術は無用なのでした。

しかし、そのブランケット版「新聞割り付け」は、活版、モノクロ、日刊という、三つの条件下に構築されてきたものなのです。デジタル・フォントによるコンピューター組み版、カラー印刷の時代になった現在でも、旧時代のセオリーや技術、ことさらレイアウトにおけるセオリーや技術なままでよいわけがありません。タブロイド版には、タブロイド版のレイアウト理論や技術が求められるようになりました。

●タブロイド版新聞は、もはや、「新聞」という型にはめ込む必要もないほどに、タブロイド・メディアとしての独自な紙面デザイン・レイアウトを展開するようになったのです。雑誌流でもなく、新聞流でもなく、雑誌流でもあり、新聞流でもある。いはば、「ハーフ」のようなタブロイド版独自の紙面が、あちこちに見られます。

●タブロイド版メディア・デザインの傾向は、ブランケット一般新聞のデザイン・レイアウトからの脱皮であると同時に、雑誌デザイン・レイアウトの吸収、という二つの流れの力学に左右されつつ、ようやく独自の世界を築きはじめたことを意味しています。

●新聞のデザイン・レイアウト・セオリーの「がんじがらめのタブー」を脱し、雑誌デザイン・レイアウトの「なんでもOKなフリーさ」が、タブロイド版メディアの流れになりつつあるのです。これらの背景には、DTPの普及、デジタル・コンテンツの浸透、インターネットの進化などがあることを、繰り返し記しておきます。

●やや口幅ったい言い方をしてきましたが、要するに、ブランケット版とタブロイド版には、異なったレイアウト・デザイン手法がある、ということです。このことは、ブランケット一般新聞が固執してきたセオリーや経験則を、タブロイド版紙面制作に無理矢理、あてはめる必要はない、ということを意味しますし、それを意識したほうがよい、ということです。

●もっと強く言えば、タブロイドは、ブランケットのレイアウト・セオリーにとらわれるな、ということになります。タブロイド独自のレイアウトを追及せよ、ということです。

●「腹きり」はだめだ、とか、「飛び越し」は禁じ手だからやってはいけない、とか、「しりもち」はやめよう、とかの「理由なきタブー」から解き放たれて、自由にのびのびと、レイアウト・デザインしよう、ということです。


イアウトは、2通りしかない! 対称形か、非対称形か、どちらかであ
●レイアウトは、大別して2種類しかない、という点については、NewsDesignのページでさんざんに展開してきたところです。その両極を、ざっくりした言葉で言えば、シンメトリー型とチドリ型なのです。シンメトリー型とは対称形、チドリ型とは非対称形を構成原理としたレイアウト・セオリーです。

●ブランケット一般新聞のレイアウト・セオリーがチドリ型であり、雑誌のレイアウト・セオリーがシンメトリー型を主流にしてきた流れで見るならば、タブロイド・メディアは、その折衷、中間形、「ハーフ」です。つまり、タブロイド・メディアは、その二つのレイアウト・パタンのどちらをも包容する、自在なメディアということができるのです。

シンメトリー
チドリ