| 「広報レイアウトの理論と実践・基本の基」２００４年改訂版 | ||||
| ０、はじめに | ||||
| １、新聞レイアウトの主なセオリー | ||||
| ①「禁じ手」を使うな ②２行見出しは「８本１０本」とし、正体を使え ③見出しは３行見出しまでとし、 千鳥（チドリ）の形にせよ ④見出しの書体は、明朝体またはゴシック体を使え ⑤基本文字は、明朝体を使い、平体にせよ ⑥紙面は、「白い」をなくし、「黒い」を散りばめよ ⑦トップ記事の見出しには 地紋を使用せよ ⑧あらゆる場面で、反復はタブーだ 「レイアウトの基本」となると、どうしても、「新聞レイアウトの基礎」をざっとたどることになろうかと思います。そこで、まず、みなさんも１度は耳にしたことがあるかもしれない、代表的な「新聞レイアウトのセオリー」についてから、このレクチャーをはじめてみたいと思います。 ここでは、そんなものがあるんだなあ、というほどの理解でいいのです。 ①は、「腹きり」「泣き別れ」など、「やってはいけない」といわれている「レイアウト・タブー」のことです。「両落ち・両流れ」「飛び越し」「飛び降り」「割り込み」「煙突」「またぎと流しの混在」「しりもち」などは、「やってはいけない」といわれています。 「やってはいけない」ことは、⑥、⑧もそうで、⑥の「白い」というのは、記事が２０行以上も、数段にわたって、流されたり、たたまれたりすると、読み疲れして、読み辛いとされ、「やっていけない」ということになっています。見出しとか写真など「黒い」ものを配置して、白い面積を小さくせよ、というセオリーです。⑧の反復タブーは、禁じ手の「煙突」（見出しが縦に並んだり、横に並んだりすること）もその一つですが、同じ写真はページが異なっていても使わない、とか、見出しに同義反復・同語反復はやめる、などがあります。記事の書き方でも、同義反復・同語反復は排除したほうがよい、といわれています。 「やったほうがよい」「やれ」というセオリーが、②③④⑤⑦です。 特に③は、後でもじっくりと触れますが、「新聞レイアウト」「新聞デザイン」の要（かなめ）ともいうべきセオリーです。これが無くなったら、新聞デザインは、そのアイデンティティーを失うのではないか、という議論が行われているほどに、重要なセオリーです。 ざっと見ると、「新聞レイアウトのセオリー」は、こんなところを軸にしています。 |
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| ２、セオリーはどこからきたか | ||||
| ①日刊一般新聞、ニュース面 ②ブランケット版 ③活版時代 ④モノクロ ⑤縦組み漢字仮名まじり文…… ⑥ジャーナリズム ＊ザワザワ・ゴチャゴチャ感・元気な紙面にせよ |
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| これらのセオリーは、どこで生まれたのでしょうか。いうまでもなく「新聞」の制作現場で生まれたのです。その新聞とは、 第１には、日刊発行の一般新聞のニュース面でした。 第２には、ブランケット版の制作現場でした。 第３には、活字印刷の時代のセオリーでした。 第４には、モノクロ紙面が主流の時代のセオリーでした。 第５には、新聞は縦組みで漢字仮名混じり文の日本語を使用することから生まれたセオリーでした。 第６には、ジャーナリズムであることを条件として生まれてきたセオリーであったことも加えておきたいと思います。 これらに加え、より多くの読者に読まれなければならないための工夫として、元気のよい、ざわざわとした、世間を反映した、「ごちゃごちゃ感のある」紙面作りをせよ、というセオリーもあります。新聞は、商業新聞でもあり、売れなければなりませんから、マーケティングの要請もあったし、現在もあるのです。 |
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| ３、広報というメディアと「今」―２００４年 | ||||
| ①タブロイド版と自治体広報 冊子型（雑誌デザイン） 1億総デザイナー（ＤＴＰ）、1億総編集者（ＨＰ）の時代 テーマは、市町村自治体広報のレイアウトについてです。それを、一般新聞のレイアウト・セオリーに引きつけて考えようとしています。 ２００４年現在の市町村自治体広報は、大別して、新聞をモデルにした「タブロイド版広報」と、雑誌をモデルにした「冊子型広報」の２通りがあります。冊子広報型は、Ａ４判、Ｂ４判、Ｂ５判で、いずれもタブロイド版より小さく、当然ながら、商業印刷方式のものがほとんどです。 人口規模の大きい都市部は、情報量も多いため、タブロイド版の新聞型が多いようです。東京の三多摩地域も、圧倒的にタブロイド版の発行が多く、これは伝統的とさえいえる状況です。 こんな背景を踏まえれば、「タブロイド版のレイアウト」という角度で自治体広報のことを検討できるのではないか、と考えました。タブロイド版の新聞は、行政広報に限らず、議会広報をはじめ、地方新聞、地域新聞、業界新聞、ＰＴＡ広報、政党機関紙、労働組合機関紙、学校新聞……などが、盛んに発行されています。 そのレイアウト・セオリーは、朝毎読（ちょうまいよみ）、日経、産経の全国紙や、ほとんどの地方新聞のセオリーを踏襲（とうしゅう）しています。すなわち、これらブランケット版のレイアウト・セオリーから学んでいます。 ブランケット版一般新聞のレイアウト・セオリーには、「レイアウトのイロハから高度テクニックまで」あらゆるレイアウトセオリーが詰まっており、レイアウトを実践するには、最良のモデルとなっているのです。 新聞と対極をなす、一方の「雄」が、雑誌です。雑誌は、新聞レイアウトとは別の、独自のセオリーを積み上げてきました。しかし、両者（新聞と雑誌）は、相互に影響し合う面も多く、レイアウトにも共通する部分があります。最大の共通点が「段組」です。雑誌や新聞と、ポスターやチラシとの違いは、段組の有無によります。 実際のタブロイド版レイアウトは、実は、新聞レイアウトの影響も、雑誌レイアウトの影響も受けています。そのことによって混乱が生じているのですが、そのことによって新しいメディアとしての独自なレイアウトを切り開いてもきました。 ＤＴＰ（Ｄｅｓｋｔｏｐ Ｐｕｂｌｉｓｈｉｎｇ）やＨＰ（Ｈｏｍｅ Ｐａｇｅ）の進化、一般大衆への浸透が、この流れに拍車をかけています。ＤＴＰの浸透が、「１億総デザイナー時代」を告げ、ＨＰの隆盛が「１億総編集者の時代」を告げています。 紙メディア（ぺーパー・メディア）のみならず、デジタル・メディア（電子メディア）を含めて、メディアのレイアウト、デザインは複雑に影響し合っているのですが、そのために混乱しているともいえる状況になっています。 タブロイド版レイアウトも、ブランケット版新聞をはじめ、雑誌、ＤＴＰ、ＨＰなどの、さまざまなメディアの影響を受け、そのセオリーを摂取しているがゆえに、混乱していると言えます。この混乱の中から、しかし、タブロイド版レイアウトは、「タブロイド・デモクラシー」とか「タブロイド・ルネッサンス」とかいわれるタブロイド版独自の世界を築き上げはじめた、とも言えるのです。 ★サンプル 広報レイアウトを、「タブロイド版のレイアウト」という角度から学習する意義は、このような点にあります。 ★ビジュアルという面、広報とジャーナリズムは異なる ★新聞は記事先行、雑誌はレイアウト／デザイン先行 |
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| ４、新聞レイアウトの要素と部品 | ||||
| ○ビジュアル＞バーバル＆グラフィック ○ ３大部品（本文・見出し・写真）……文字と画像 ①本文のレイアウト（流し、たたみ、流したたみ＆横組み） ②見出し。文字（Verbal）と画像（Visual）の両面性、形（字形・フォント……）とレイアウト（縦横、斜め……） ③写真のレイアウト。 ④その他部品のレイアウト ＊全体のレイアウト＆デザイン。３大部品のバランスを考えつつ、その他の部品を「創造的に」配置する。 一般新聞の1ページを広げてみましょう。さまざまな要素と部品で、ぎっしり埋まっているのが理解できます。 ざっと、列挙すると、 ①見出し、 ②前文、 ③本文、 ④写真説明、 ⑤表――の文字群と、 ⑥グラフ、 ⑦イラスト・カット、 ⑧バックパタン、⑨罫線、 ⑩写真――の画像群に分けられます。 このほかに、見逃してはならないのが、 ⑪空白と、 ⑫色――です。これらを、バランスよく配置する作業が、レイアウトです。 これらのうちの、見出し、本文、写真の３つを、ここでは「３大部品」と呼んでおきます。３大部品を配置できれば、そのページの大方をレイアウトしたことになる、と考えてください。これがラフ・レイアウトです。 ３大部品は、「血と肉と骨」と言えるほどの「要素」です。文字要素（Ｖｅｒｂａｌ Ｅｌｅｍｅｎｔｓ）としての本文記事、画像要素（Ｇｒａｐｈｙｃａｌ Ｅｌｅｍｅｎｔｓ）としての写真、両要素にまたがるのが見出しです。 その他の部品は、ディテールやテーストを表現するための２次的要素と言えます。 これらの部品を一つ一つ、レイアウト・テクニックの基本という角度から学んでみましょう。 まず３大部品の、本文、見出し、写真。次に、その他の部品という順序で学びます。あくまで、「基本の基」です。これらの部品の一つ一つについて、レイアウト上、知っておいたほうがよいという「最低限」です。 |
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| ５、本文の書き方とレイアウト | ||||
| ＜本文の書き方・書かれ方＞ 新聞の本文記事には、書き方のルールがあります。より多くの読者に、わかりやすく、間違いなく伝えるための約束ごとが、長い歴史の積み重ねの中で築きあげられてきました。それをマニュアルとしてまとめたものが、「記者ハンドブック」です。 ５Ｗ１Ｈ３Ｃを欠かすな、とか、常用漢字・用字用語の使用基準とか、使ってはいけない差別語だとか、外国の地名・人名の表記法とか……が記されている新聞制作必携の辞書です。書き方のルールであって、レイアウトのルールではありませんが、レイアウトするときには最低限知っておかなければならないことが書かれているのです。 本文記事というコンテンツの作成と、読ませるためのレイアウト作成は、本来、ひとつのものであれば、よりスムースに運ぶものでしょうが、実際は分業する場合がほとんどです。このために、書かれた記事の意図を、レイアウトする段階で汲み取りそこねることも起こります。分業のシステムが、両者の意思疎通を妨げ、ちぐはぐになってしまっては、よい紙面はつくれません。 レイアウトという作業は、コンテンツ（記事）のより深い理解を求められ、単なる素材でしかない大元の原稿をよりいっそう引き立たせる「記事」として完成させる仕事です。取材し、原稿を作成する作業を、編集・整理し、レイア ウトする作業が上手に引き継がねばなりません。ですから、レイアウトするためには、記事の約束ごとを取材記者以上に知っておく必要があるのです。「書く技術」に精通していないで、「書かれた記事」をレイアウトすることがうまくいくわけがありません。 ニュース面の本文記事（報道記事）の書き方の「基本の基」として、 ①主語と述語、５Ｗ１Ｈ３Ｃという必要不可欠な要素を盛り込みながら正確で、簡潔・平明で、「インパクト」のある文章になるように書きます。★主述＞５Ｗ１Ｈ ②まず重要なことを先に書き、文末に行けば行くほど重要度の低い内容になるように書きます。これを、「逆ピラミッド型の文章」と呼びます。 ③「 テニオハ」（＝助詞）を正確に使い分けて書きます。 ④句読点を丁寧に打った文に、７行（１２字詰め）前後で改行して書きます。 ⑤接続詞は極力、避けて書きます。 ⑥口語文にし、無闇に文語は使わないで書きます。 ⑦「中学生が読める」「80歳が読める」記事を意識して書きます。 ⑧英文法でいう「単文」が望ましく、「重文」ならまだしも「複文」は避けて書きます。 ⑨「用語用字」は、記者ハンドブックに準じて書きます ……などを、ここでは記しておきます。 ＜本文のレイアウト＞ 本文記事の「形」を見ていきましょう。レイアウトの「血」に相当する重要な要素である本文の「形」です。 ＊縦組み、日本語、漢字仮名混じり文を前提 ①流し……右から左に、モノにぶつかったら、右下に落ち、また右から左に流れていく本文の形です。 ②タタミ（囲み）……記事を、２段、３段、４段…と等分して割り、結果、矩形にします。囲みは、タタミを罫で囲んだ形ですから、タタミのバージョンと考えられます。 ③流しタタミ……流しの途中で、モノにぶつかった記事が右下に落ちたとき、落ちた記事を割る（＝タタム）形です。 ④横組み……字詰めを自在に変更しながら、横組みを縦組み記事の中に配置します。 ニュース面は、この４種類の「形」があり、これらを紙面の各所に配置してつくります。 フィーチャー面（読み物面）やオピニオン面、情報面は、「流し」をほとんど使いません。これらの面は、矩形、Ｌ型のモジュールとする場合が多いのです。このことは、「流し」記事が、報道やニュースに適している、と想定されていることを意味しています。 本文記事は、このほかに、行間を縮小したり、写真を食い込ませたり（回り込ませたり）して、その「形」を変えることもありますが、レイアウトの技法としては、流し、タタミ（囲み）、流しタタミ、横組のうちに包含されます。 ★ブロック組み |
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| ６、見出しについて | ||||
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①読ませるための「３段階」 |
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| ７、写真の扱いについての基本の基 | ||||
| ①編集権 ○トリミングでなにをする？ ○トリミングは、著作権と編集権のたたかいだ ②著作権 ○「切り抜き、乗せ」厳禁の一般紙 ○写真は添えものではない ③ステロタイプな感覚、刷り込まれた感性に注意！ 写真の扱いは、これまで「不当」と言えるほどに、粗末にされ、冷遇されてきました。今でも、大新聞社の中で、写真のことを「添え物」と呼んでいるところさえあります。文字原稿に「添えるもの」として、従属的な位置づけが行われ、「差別」されてきた歴史があります。 近年、ようやく、写真の「表現」「報道」の主体性を重んじる風潮が生まれたのは、一に、写真のもつジャーナリズム性の再評価や著作権思想の浸透、二に、紙面のビジュアル化の進展といった、二つの流れが背景にあります。「添え物」として軽視される状況ではなくなったのですが、過去の慣習や経験が、一挙になくなるわけもなく、現在でも、悪習はいたるところで続けられています。 レイアウトの角度から、写真を考えていく時にも、この点を視野に入れる必要があります。その典型的な例が、トリミングというシーンに現われます。写真のトリミングは、写真の主体性を、編集という名で侵犯する、という本質をもっているのです。ビビッドには、「著作権と編集権の対立」として、トリミングという作業は問題化することがあるのです。 ★ そもそも、トリミングは、どのような目的で行われるのでしょうか。それは、「イメージの集中」という編集方針、紙面制作方針に拠っています。取材された文字原稿（記事）に即して写真を配置し、記事の内容に沿って写真をトリミングし、そうすることによって、記事全体のインパクトやわかりやすさを生み出す、という編集上、紙面制作上の要請からです。この作業の中で、トリミングは行われ、記事全体の「イメージの集中」を「補足」するようになっています。情報の取捨選択、追加削除といった「情報の管理／操作」がトリミングです。 もちろん、このことは、新聞社内で明記された了解、あるいは暗黙の了解となっていますし、写真記者（カメラマン）と編集・整理記者の間の分業の中で認められてきました。 「写真の扱い」のルールとして、①切り抜きの禁止、②写真の上に他の写真を乗せることの禁止――などを実行している新聞が一般的です。これらは、「写真という事実」、写真の主体性、著作物性、作品性を尊重し、写真のジャーナリズム性、報道性などを配慮した結果です。 ★ＦＡＣＴ＆ＦＡＫＥ 「１枚の戦場の写真」が、文字原稿の何千、何万行に匹敵する「情報」を伝える、というようなことがあります。「行数」に換算できない、文字原稿とは異質の、ビジュアル・コミュニケーションとしての写真への評価は、この程度の扱いルールに止まっていいわけがありません。写真は、フォトジャーナリズムとしての独自な領域を確立していますから、無闇な加工は控えるべきであるという考え方が、「新聞写真」の領域にも及んできました。 しばしば論じられる例があります。 オウム真理教（現アレフ）が、マスコミへの記者会見を行ったときの「ニュース写真」のケースです。複数の教団幹部がこざっぱりした教団服姿で、微笑をたたえて会見に臨みました。何枚も撮られた「絵」は、当然ながら微笑をたたえたオウム教団の姿でした。新聞編集の現場では、「あんな残虐な事件を起した集団の笑っている顔は載せない」というステロタイプのルールがあるのです。そのため、「オウムの笑顔の写真」は新聞には掲載されませんでした。 「あんな残虐な事件を起した集団の笑顔」だからこそ、無気味なリアリティがある。「外見的なイメージと、その人の内部で起こっていることのギャップが核心にある」ような事件では、「笑顔の写真」のほうがリアリティがあるのではないか、という意見が新聞社外部のフリーの写真家から出されています。「笑顔の写真」は、結局、雑誌には掲載され、新聞には掲載されなかった、として新聞編集側の課題になっています。 写真の扱いも、見出し作り、記事の書き方などと同じように、紋切り型（ステロタイプ）、ワンパタンの発想への再考が求められている、ということができます。 |
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| ８、オーソドクスなレイアウトから最新傾向・発展形（ポスター、ちらし）まで | ||||
| ① ニュース面、フィーチャー面、オピニオン面、情報面…… ②ニュース面レイアウトのいくつかの方法 １押さえて流す（流したたむ） ２紙面分割パタンに当てはめる ３グリッド・システム ４アンチ・オーソドクス。直感・ひらめき ③ニュース面以外のレイアウト １オピニオン面 ２情報面レイアウト ④ちらし、ポスターなどへの展開 ①一般新聞の「面建て」を見ると、ニュース面と、ニュース面以外の面に分かれています。ニュース面は、第１面の総合面をはじめ、国際面、経済面、社会面などのことです。それ以外の面は、フィーチャー面（読み物面）といわれますが、特集面全般を指す場合が多く、この中でも、内容が専門化して、オピニオン面、情報面などの分類も行われるようになりました。 ニュース面は、記事の変動が多く、緊急で重大なニュースが飛び込んでくると、「差し替え」が発生し、レイアウトの変更が行われます。「差し替え」は、版帯（時間帯）によっては、「部分差し替え」で済ませますが、超重大ニュースの場合には、「全面差し替え」という大掛かりなレイアウト変更を、しかも全ページに及び行うこともあります。 「禁じ手」が強く意識されるのは、ニュース面においてである、ということができます。フィーチャー面では、「追い込み」で紙面が作成される場合が多く、あるいは、定型のレイアウトである場合が多く、降版・印刷日当日の大幅なレイアウト変更は行わないようになっています。 ニュース面レイアウトのいくつかの方法 ②-１ 「（左を）たたんで押さえ、（右を）流すまたは流したたむ」 オーソドックスな紙面をつくるレイアウト方法として、「（左を）たたんで押さえ、（右を）流すまたは流したたむ」という定石があります。この場合、右上のトップ記事との関係に注意することが先決です。最重要のトップが、左にたたんで押さえたタタミに圧迫され、貧弱になってしまうことを避けながら、繰り返します。 右を流す場合、「流しタタミ」で「押さえる」（＝記事を止める）ことを併用します。左は、「たたんで押さえる」ことをしないで、罫を立て、「流す」こともあります。いずれも、紙面を、右部分、左部分に大別し、記事を追加削除したり、見出しを３段にしたり、写真を拡大・縮小したりしつつ調整を図りながら、次第に、紙面左下まで、ページの隅々を埋めていくブランケット版特有のレイアウト方法です。 ②-２ ２分割、３分割、４分割、変形２分割、変形３分割、変形４分割……など、定型の分割パタンを念頭に置きながら、記事内容と照らし合わせて、いずれかのパタンに当てはめていく、という方法もあります。 ★９等分、６等分… ②-３グリッド・システムは、原則的には字詰めの変更を行わない新聞レイアウトでは、通常、使いませんが、特集面など、臨時的な紙面レイアウトや、はじめて紙面を設計・作成する場合などに便利です。雑誌レイアウト、チラシ、ポスターなどの非段組系メディアで活用されています。 「割り付け用紙」が新聞レイアウトでは用意されている場合がほとんどでしょうが、その「割り付け用紙」の単位モジュールを、主として「正方形」にしたものと考えるとわかりやすいかもしれません。「行と行間を単位」とした新聞の割付用紙を、「正方形」で区分して、本文、見出し、写真、罫などを、「グリッド」に沿ったレイアウトにします。「法則性」のある、すっきりした紙面をつくる場合に好都合です。 ②-４ アンチ・オーソドクス 直感的／ひらめきレイアウト。メーン写真や見出しの位置を最優先にするレイアウト。 ★オーソドクスな千鳥型、シンメトリー、センター放射、低重心 ニュース面以外の、フィーチャー面、オピニオン面、情報面には、このグリッド・システムによるレイアウトが適しています。「デザイン技法」の新聞レイアウトへの摂取という側面が、このグリッド・システムには強くはたらいています。 ③-１ オピニオン面 ③-２情報面のレイアウト ④ちらし、ポスターなどへの展開 |
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| ９、新聞レイアウトの禁じ手について | ||||
| 禁じ手を見てみましょう。 ①同じ大きさ・形を避ける。（繰り返しを避ける。） ②見出しの横並びは避ける。 ③門構えは避ける。門構えとは、罫が横並びになることです。 ④腹きりは避ける。 ★毎日、読売新聞の試み ⑤尻餅は避ける。２段以上の写真や、２段以上の見出しは、最下段に置かないという禁じ手です。１段ものなら「まあ、いいか」と許容する向きもある。理由はない。 ⑥両落ち・両流れ・両降りは避ける。 ⑦泣き別れは避ける。 ⑧流しとまたぎの混在は避ける。 ⑨煙突（見出し、写真）は避ける。 ⑩飛び越しは避ける。 ⑪そっぽは避ける。人物写真を複数点レイアウトする場合、右スペースに配置した写真の「絵柄」が右向きになり、左スペースに配置した写真の「絵柄」が左向きになり、互いに「そっぱ」を向いている状態になることを指し、避けたほうがよいとされている。 ⑫割り込みは避ける。ある記事の中に、関連記事でもない、まったく異なる記事が、割り込んだ形。 ……などが、禁じ手と呼ばれているものです。 「セオリーはどこからきたか？」でふれたように、一般新聞レイアウトのセオリーは、①ブランケット版、②日刊発行、③活字・活版印刷、④モノクロ時代……の環境下に生まれ、育まれてきました。ですから、今日のコンピュータ組み版、デジタル・フォント化、カラー化 の時代に、そのまま踏襲する意味は薄れています。 タブロイド版で、しかも、月刊、月２回刊、旬刊か、たまに週刊といった発行サイクルの新聞や広報紙が、ブランケット版・日刊のレイアウトセオリーを、「法律」のように遵守する必要はまったくないのですが、中には捨てがたいセオリーもあります。ブランケット版一般新聞で「禁じ手」とされてきたレイアウトーセオリーを知っておく意義はこの点にあります。今日的なレイアウトを作りたい場合に、「禁じ手」は、批判的な眼をもって学習したほうがベターということでしょう。 ★ 基本レイアウト・実演／トレーニング――タブロイド版で「押さえて・流す」レイアウト ★紙面分割と直感、右肩とセンター ★タブロイド・デモクラシー（ルネッサンス） |
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| １０、紙面刷新へのヒント | ||||
| どうしたら読まれるか？ ＜バーバルな側面＞ ○「書く」ということは「泳ぐ」ということと同じ。書けるようになるのは、泳げるようになるような繰り返し、経験、時間を要する。寿司のにぎり、鉄棒の逆上がり、自転車を漕ぐ… ○企画 取材と依頼原稿 ○一番近くで「取材」している有利な立場 ○広報としてのエディターシップの訓練 ・編集＞要約するスキル……。 ・記事／本文、前文、見出しで読ませる ○知る権利、知らせる義務、情報公開、広報とは何かをよく知る。結論的には「読者主義紙面」の創造。政策広報というよりも「お客さま第一主義」ではないか。「お上のお触れ」から「市民自治」のサポート広報へ。コントロールではなく情報公開サービスへ。クリール委員会のプロパガンダからパブリック・リレーションへ。全戸配付という媒体力の自覚へ。 ＜ビジュアル／トータルに見た現状＞ ○「過剰」の一語に尽きる 装飾過剰、色彩過剰、フォント過剰、テク過剰… 編集長はいるけどアートディレクターがいない ○余白 ○色過剰 ○作り込み過剰。上質紙印刷でありタブロイドであることを考える ○質感と切れ味 ○すっきり紙面であってもよい、あったほうがよいというメディア ○ゴチャゴチャ感が好まれている？らしい新聞 ＜読まれるためのヒント＞ お知らせの処理。ページ当たり１０行を削減。 見出し、前文など「編集」するスペースをつくる ・フォーム、表記、記号化 ・送り込み ・行間／字間／サイズ／字詰めなどの文字組／段組の工夫 ・小見出しのベタ白抜き化 前文／見出しで価値付けを打ち出す「編集権行使」を。 依頼原稿、市民／市域の潜在的リソース／財産の活用 街ネタ（タウン誌的側面）を拾う 号外や特集面、面建て／構成の変更、定期的刷新 定型カット類のリニューアル 見出し回りの余白、風穴的余白 第１面表紙化 インフォメーション・グラフィックス 冊子化 思いきって３段／５段写真を使う 写真／イラスト／グラフィック面の常駐 号外／特集などでのフォロー 要覧／ポスター化などへ分散 ＨＰとの分担 アンチ・オーソドクス紙面すなわちニューウェーブ紙面の積極的展開 トータル・デザイ二ング、アート・ディレクションなど「紙面戦略」を打ち出す。元気なのがいいのか、静かなのがいいのかか、美しいのがいいのか、などの「紙面コンセプト」からはじまる。 |
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| １１、ＴＩＰＳ | ||||
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| １２、参考文献 | ||||
| ◆「情報を見せる」技術、中川佳子著、光文社新書 ◆「言葉の行革」のすすめ、南田加辺著、公人社 ◆差別用語の基礎知識、高木正幸著、土曜美術社 ◆メディアと女性の人権、かながわ女性センター ◆70日間でマスターするレイアウト基礎講座、視覚デザイン研究所編 ◆新編・新聞整理の研究、社団法人日本新聞協会 ◆日本語のデザイン、永原康史、美術出版社 ◆おもかげの国、うつろいの国、松岡正剛、ＮＨＫ出版 |
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