ニュース報道を第一義とする「新聞」以外の、雑誌、広告、ポスターなどの編集・デザイン
汎レイアウト論
この世はあまねく配列・配色・構成・構図・構造だ
紙メディアばかりでなく、全世界に存在するものを「レイアウト」とみなすことだって可能です。花、シマウマ、建築物、道路、車、自然、街並み、絵画……曼荼羅。世界とは、「造化」「自然の妙」「天の配剤」であります。人間の意志によるものであろうと、なかろうと、整然としていようが、混乱していようが、「配列」にちがいありません。「配列」すなわち「レイアウト」だと言っても過言ではありません。世界は「広義レイアウト」と言えるのです。

 A、建築製図(平面図)、年賀状、農地・庭園のデザイン、地図、タイル画、棚の陳列、喫茶店の座席、生け花、洋服、車・船・飛行機
 B、花・葉、動物、自然、宇宙
 C、ペーパーメディア=印刷物
 D、WEBデザイン

平面であれ、立体であれ、この世のものは、「点」「線」「面」(そして「色」)で表わすことができます。
●点、線、面の構図&グラデーション&色 
 @点とは何か?
 A線とは何か?
 B面とは何か?
 Cグラデーション

色、光
■レイアウトの定義・レイアウトの原理        
●では、狭義レイアウトと広義レイアウトの違いはどこにあるのでしょうか。わたしたちがが問題とするレイアウトと「シマウマ」のレイアウトは何が異なっているのでしょうか。

●そこのところを、定義しているのが、著作権法です。
集著作物=著作権法第12条。
第12条@編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。
A前項の規定は、同項の編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。

●「編集物」「著作物」「編集著作物」――の、それぞれの違いが、ここに定義されています。「素材」という言葉との違いも理解しておきましょう。

→「編集者の著作権基礎知識」

●印刷物になったレイアウトは、「素材の選択又は配列」ですから、「編集著作物という著作物」なのです。ここで誤解を恐れずに言えば、「創造性」を有するか否かは、たいした問題ではありません。そのレイアウトが、ほかのだれかのマネで、ほとんど同じという場合以外、レイアウトはそれを作成した個人(集団)の創造性がほとんどの場合、認められます。文章の著作権が、幼児の拙い作文であっても創造性が認められるのと同様に、上手い・下手はほとんど「法律上の創造性」とは関係がありません。「主観的」であれば「創造的」である、と言ってもいいかもしれません。主観的でない文章や記事がないように、主観的でないレイアウトも存在しない、と考えればわかりやすいでしょうか。
●日本新聞協会は、新聞記者が書く事実報道の「ベタ記事」にも、記者の創造性を認め、著作権を主張しています。
●ちなみに、レイアウト用紙に描いたレイアウトそのものは、著作物になる可能性があります。実際に、印刷物になっていないレイアウト(そのもの)が、著作権を主張する場面は、まずあり得ませんが……。
●建築家フランク・ロイド・ライトが書いた設計図に、著作権があることは言うまでもないことですが、われわれが日々作っているラフレイアウト(そのもの)も、究極のところ、著作物と言えるのです。
●このように、少しずつ整理していくと、レイアウトがわかり、レイアウトすることができるようになり、レイアウトが上手になっていきます。そのとっかかりをつかんでいくのです。「経験的に知っていること」を「概念で」理解し、自覚することが、実際にレイアウトをすることにきっと役立つのです。

●動物のシマウマそのものは、「著作物」でも「編集著作物」でも「編集物」でもありません。あたりまえのことです。しかし、シマウマを紙に描いたり、写真で写したりした時、描かれたシマウマ、写真になったシマウマは、「著作物」になります。動物・自然そのものは、著作物ではありませんが、それを描き、写せば、描かれて出来上がった、写されて出来上がったモノは、紙であれ、デジタル・データであれ、「著作物」になります。

●レイアウトは、「素材」である「著作物」や「編集物」を「創造的に」「配列」した結果出来上がった「編集著作物」という「著作物」を制作する作業です。

●「配列」としてのレイアウトは、だから「無限だ」。
●「配列」とは、大きさの「陣取りだ」。
●「配列」は、ひとつの定められた形を目指す。
●しかし、そんなものは、客観的には存在しない。「予定調和じゃない」
●「乱調だ」
●「表現だ」
●「花だ」
●「シマウマだ」
●「ナビゲーションだ」……などと、
自分流の「哲学とセンス」、「ポリシーと美意識」、「美の論理・セオリー」をもってしか作成できないものです。レイアウトは、百人百様にしかなりえないものなのです。
■だれにでもできるレイアウト ⇒いいものをマネすればいい
⇒いいサンプルを見つける
⇒サンプルにはセオリーがある
⇒セオリーを知りマネする
*「真のレイアウト」はマネじゃだめ、という正論もある。
■レイアウトとはなにか ●素材(文字データや画像データ=著作物や編集物)を、価値判断して(選択して=受容し拒否し)、創造的に配列する。
●価値判断の基準は、メディアの編集方針・制作方針により異なり、多少なりとも、個人によって異なる。
●その行為は、著作権法上の編集著作物の作成にあたる。
●著作物も編集物も編集著作物も、法人(集団)で作られる場合、職務著作となり、その権利は法人に所属する⇒新聞社と新聞記者&依頼記事の関係。
●重要なもの(好きなもの)を選び、不要なもの(嫌いなもの)は捨てる。選んだ、重要なもの(好きなもの)を美しく並べる――のがレイアウトだ!
●実際には、選び・捨てるという作業(=編集)は、編集権(所有)者が行う場合が多い。すでに編集権者によって選択された素材を、編集権者の指示によって、美しく配列し、組版を作成する制作者(制作会社)が存在する。
■メディアにより異なるレイアウト ●ペーパーメディア;新聞、雑誌、単行本
●新聞は情報の階層性・位相性を売り物にしている→トップ〜サブ〜ベタ→アメリカ大統領の死は1面トップ5段抜き100行の特別記事で扱う。横1段抜き、ベタ黒白抜き地紋をメーン見出しにして、など。
●雑誌には、情報の同価値性を売るという手法が流行っている→「ぴあ」のカタログ的誌面作り→アメリカ大統領の死と、「隣のおばさん」の死も、同じ20行に収める。2人の死はどちらかが重要であるという価値判断を編集者が行わない、という考えに立つ。2人の死を同列に置く、という価値判断をしている、ともいえる考え方だ。
■デジタルメディア;別項
■どんなメディア(ペーパー)にも共通すること ●より多くの読者にアピール(訴求)することをテーマとしている
●特定多数であれ、不特定多数であれ、読者層を選定(予想)している
●情報を伝える(媒介する)手段=メディアであることの自覚
 →伝わらなければ意味がない、という自覚がある
 →読者は「知りたがっている」と想定している
 →「知る権利」があるから「知らせる媒体」が必要である
 →日記・手紙ではなく、多数の読者の存在するコミュニケーション・メディアである
■新聞レイアウトの基本
●新聞にはレイアウト・スタイルのほとんどすべてが含まれている
●大別すると編集面と広告面
●ニュース面と読み物面=特集面(と情報面=テレビ面、株価面など)
■スポーツ新聞のレイアウト(別項予定)
■レイアウトの手順<基本の基>
1 イメージ形成
@ 素材の把握→素材のすべてに目を通す。読み取る→素材を作成=創造した人が何を考えたのか=コンセプトを追体験・イメージする→批判的に、発展的に。
A 価値判断→素材の優先順位(プライオリティー)を考え、分類する
B 紙面構想→イメージ分散をさけるために、紙面のコンセプトを絞り込む→紙面イメージを練る→元気な・爽やかな・品のある・格調高く・マニアックな・エレガントな・ドラマチックな・劇画的な・静かな・おとなしい・賑やかな・キッチュな・パンクな――など。
C 紙面コンセプト→「古いイタリアの民家のように素朴でおしゃれなイメージ」「ニューヨークの地下鉄のように危ないイメージ」「金閣寺のように荘厳で華麗な」「東照宮のように華麗で豪華な」「エレガント&マニアックな」「パンクでエレガントな」「エレガントでキッチュな」など。
* 商品宣伝と事実性。エンタテインメントか報道・ジャーナリズムか。どちらを重視しているメディアなのか。
D 方法の絞り込み→技法の選択→シンメトリーかアシンメトリーか。グリッド拘束率を高くするかジャンプ率を高くするか。自由に展開できるメディアなのか、否か。
* 以上は、順不同で作業して可。
* ああだこうだとイメージを頭の中で描く時間。この時間は校了・降版まで続く。
2 ラフスケッチ
@ 構図(コンポジション)
a,シンメトリー=対称
b,リピテーション=反復
c,リズム=律動
d,アクセント=強調
e,プロポーション=比例
f,コントラスト=対立
g,バランス=均衡
h,グラデーション=階調
A 変化→形や色などの複雑感を出し、単調さをなくす。
B 統一→全体のまとまり。変化一辺倒は、複雑なだけになる。
C 「変化と統一」の組み立て
D 遠近法→中心、重心、近景・遠景
3 レイアウトの仕上げ(フィニッシュ)
@ 細部(ディテール)と全体
A 禁則処理→新聞の場合、両落ち、泣き別れ、腹切り、反復、飛び越しなどを避ける(新聞レイアウト固有のタブー)
B 線・点・面の構図
C 仕上げのおしゃれ→「変化と統一」の角度から再度、見直す
D 写真のトリミング
E 余白の処理
F 罫線の工夫
4 見出し作成
@ 見出し・コピーの作成
 →著作権法上の著作物の作成にあたる
 →この作業以外は、編集著作物の作成にあたることを銘記
 →「見出しを考える」「見出しを造形する」
A トップ(写真・コピー・記事)
B その他(サブ・ベタ記事、表など)
C レイアウト出し(デザイン出し)→指示
5 組版(マシン・オペレーション)
@ 粗組み〜点検・校閲〜
A 仕上げ組〜最終点検〜校了・降版
*視覚心理、造形心理、色彩心理、社会心理、大衆心理、知る権利、報道倫理、表現の自由、言論の自由
■色のレイアウト=配色の基本セオリー
●抽象形の構成
 @点の構図
 A線の構図
 B面の構図
●色の3要素
 @明度
 A彩度
 B色相
 *グラデーション
●類似色
 同系色
 反対色
 補色
 白・黒・グレー
●伝統色
●慣用色
●赤には緑、青には橙、黄には紫。3原色のそれぞれには、その影の部分に、ほかの2色を混ぜ合わせてできる色=補色をもって光り輝く。ハレーションを起こす。黄と紫のように明度差の大きい配色はハレーションを起こさない。
●寒色、暖色

●トーン
●基調色
●マンセル色相環
●色のイメージ
 @エレガント→やさしさと知性
 Aスポーティー→3原色
 Bクラシック→深み、落ち着き
 Cモダン→寒色で灰色っぽいトーン
 Dフォーマル→黒に鮮やかな色
 Eカジュアル→たくさんの色
 Fロマンチック→夢のような淡い色
 Gダイナミック→明度の差
 *「色の本棚」(視覚デザイン研究所)参照
●YMCK
●RGB
■自分はどんな紙面を作りたいのか
@ 花のある紙面
A 品のある紙面
B 色気のある紙面
 a,セクシー
 b,ジェンダーフリー
C硬い紙面
D柔らかい紙面
E元気な紙面
F その他モロモロ
■「茶の本」について
●岡倉天心が千利休について英語で書いた日本文化論「茶の本」は、茶道の発生から歴史、利休によって大成された芸術としての茶について、西洋文化との比較考証を通じて、独特の日本文化論を展開している。
●西洋建築と日本の建築の違いを考証したくだりで、「西洋=シンメトリー(対称)」と「チドリ(アシンメトリー・非対称)=日本」の対比を論述している。新聞整理用語の「チドリ」は、アシンメトリーの典型である。
■映画「マルメロの陽光」について⇒シンメトリーの追求
■どんな練習をすればいいか
@ 日々、新聞を「眺める」→一般紙とスポーツ紙
A 電車の中吊り広告を「読み取る」
B 気に入った写真をコレクションする
C 花の色を見つめる
D 植物の形、葉の模様、色合いを眺める
E 好きな画家の画集を一冊手元に置く
F 好きな雑誌をレイアウトの観点から読み解く
G 専門誌をかじる
H その他モロモロ